2024年7月11日、その時が来たのだという思いで、訃報を受け取りました。
先生が最後に奄美を訪問され、その帰り際に名瀬徳洲会病院幹部を前に遺された言葉があります。「自分が奄美のことをできなくなったときには、自分たちで生きていくことを考えなさい(覚悟してください)」でした。それまで一人で背負われてきた徳田虎雄理事長としての責任を思い、理事長亡き後の奄美の医療に対する私たちへの覚悟を迫る言葉と受け止めました。訃報に接した今、また思い出されます。
徳洲会の理念は、わかりやすく単純です。私たちの組織の強さはここにあると考えます。生まれた組織は、目標とした理念に向かって歩み出します。ですが、ときとして時の経過がその理念を忘れがちにさせます。私たちはそれを見失うことがあっては決してなりません。
37年間の徳洲会の離島医療を目にしてきて考えるようになったことがあります。その歴史は、困難さに直面しながらいつ崩壊してもおかしくない取り組みの連続でした。その歴史を作り上げたのは、まさに徳田虎雄先生が掲げ、徳洲会が心の支えとしてきた「生命だけは平等だ」の理念にあったのだと考えています。単純でも、目標達成が容易ではない理念を唱え続け、その実現を追い求めてきたことが、最大の力であったと思うのです。先生が逝かれても、先生の思いを知る仲間が生きている間は徳洲会の姿勢は変わらぬものと信じています。
虎雄先生は機会あるごとに述べられていました。「死んだらゆっくりできるのだから・・」
先生の好きな言葉通り、自由を求め、愛に生きた人生だったと思います。それでも、世界中を飛び回り活躍していたときも、病に倒れてからも、苦しい日々の連続であったと想像します。「やっと、ゆっくり休めるときが訪れましたね」そんな言葉をお伝えしてお別れをしたいです。徳田虎雄先生ありがとうございました。
2024.7.13 名瀬徳洲会病院 総長 松浦甲彰